大澤この歌は昭和25(1950)年の「1年生を迎える会」から歌われるようになりました。当時の「1年生を迎える会」では6年生が劇を演じていました。この劇中で歌う歌として、小俣万次郎先生(のちに第11代初等科長に就任)が杉山勝栄先生に作詞を、高橋利根子先生に作曲を依頼しました。それが「さくらのきしょう」です。
劇中で歌が披露された場面は、桜の徽章が付いた正帽をだれかに取られそうになった児童が、「チョコレートも飴もいりません。」と言いながら正帽を奪い返す一幕です。正帽を取り戻した児童が「さくら さくら」と歌い始め、それに続き仲間たちと共に元気よく歌うといった内容でした。
現在では、「1年生を迎える会」と「6年生を送る会」で歌っています。
大澤学習院の徽章が桜花となったのは、本居宣長(江戸時代の国学者)の「敷島の大和心を人問はゞ朝日に匂ふ山桜花」の歌の精神(日本人の心は朝日に匂う山桜花のような心である)にもとづいたもので、明治10(1877)年の学習院創立当初より用いられています。
作詞した杉山先生は、この歌詞における「さくら」とは、桜花ではなく「きしょう」を身につけた「子どもたち」のことを指していたと思われます。
1番の歌詞に「ぼくの ひたいに わたしの むねに」とありますが、ここでは男子児童の正帽や女子児童の正服に桜の徽章が付いていることを表現しています。
また、2番にある「おにわに まどに いつも さいてる」という歌詞も、「子どもたち」のことを指しており、いつも窓辺やお庭に「子どもたち」がいる様子を表しています。
大澤3番の「日本の そらに せかいの そらに」という歌詞は、子どもたちを「小ざくら」と表現する杉山先生が、「まだ小さい小ざくらが、つぎつぎと大ざくらになって、日本の空だけでなく、世界の空にまで、美しく、気品高く、香り豊かに咲いてもらいたい」という想いを込めて書かれたものです。第二次世界大戦後の混乱期にあっても、「世界に羽ばたいて欲しい」という願いにもとづき、初等科では国際化を意識した教育が行われていたことを示しています。
また、3番冒頭に出てくる「へいわの きしょう」とは、この歌の翌年(昭和26(1951)年)に制定された「学習院院歌」4番の歌詞「真理と平和」にも重なります。当時の先生方が「平和」に対し強い想いを共有されていたと読み解くことができます。
大澤令和5(2023)年度から新たに始まった英国研修*では、研修校で歌などを披露する機会がありました。学校紹介のプレゼンテーション(発表)では「学習院院歌」を歌い、フェアウェルパーティーでは「さくらのきしょう」を歌い、「ソーラン節」の踊りも披露して大いに盛り上がりました。研修に参加した児童にとっては、初等科の歌がさらに大切な思い出となったことでしょう。
*英国チェルトナム・カレッジ・プレパラトリー・スクールにて
令和5(2023)年4月27日~5月6日迄海外研修を実施
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